「子供がなりたい職業ランキング」にも10位以内で登場する、人気が高い職業「保育士」。かわいい天使たちに囲まれた幸せな毎日。。。 しかしその現実は、甘くない。
今回は、保育士を取り巻く厳しい現実を私の実体験を元に振り返りながら、なぜ保育士不足なのか?について考察していこうと思います。
2019年10月から始まった3歳以上の保育園の無償化はもちろん大きな要因だと思われますが、保育士不足自体はそれ以前からの問題です。ある先生の話では、統計上の保育士資格保有者の数は十分だけど、保育士を続けない人が多いことが現在の保育士不足の原因なのだとか。それでは、なぜ保育士を続けようと思えなくなるのでしょうか?
1)給与水準の低さ
保育士のパート/バイトの時給は、せいぜい最低時給+数百円がいいところ。(派遣の場合はもっと高いのですが、派遣は世帯の最低収入等の資格条件のため、私のように限られた日数のみ勤務を希望の場合は難しい)。国家資格要の仕事に対する対価とはとても思えないのですが。。。日本が如何に保育士を遇しているかをよく表していると思います。この点だけでも改善すれば、保育士に復活する人が増えて、保育士不足はかなり解消される気がします。
2)何でもやって当然?
保母さんが前身の保育士。保母さんは家庭のお母さんの代わり?、だから家事で主婦が普通にやることは保育士もやって当然、という認識なのでしょうか。普段のトイレ掃除も大量のゴミ出しも日常的に保育士がやって当然、が保育業界では一般的な考えだという印象です。(公立系の施設でない限り、用務員さんを雇っていない園が多いようです。)苦労して国家試験をパスした誇りある保育士、、のイメージには程遠い待遇です。
これは以前外資系企業に勤務していた私としてはちょっとショックな事実でした。一般企業に勤めるスタッフにこのような扱いをしたら、本気で訴えられそうです。。
3)シフト制での勤務(保育園の場合)
働く保護者を支えるために、多くの保育園は朝早くから夜まで開業しています。その為、正規スタッフは基本シフト制での勤務となります。土曜日も開園している園も多くあります。シフト制での生活が困難で、体調を崩して3カ月で退職したという方もいらっしゃいます。
4)(低待遇にしては)責任が重い
小さな子供の命を預かる仕事、責任は重大です。保育中の子供に、ちょっとでもアザや傷がついてしまったら、保護者の引き取り時に説明が必要になります。また傷やアザのレベルによっては、記録に残したり会議中に他のスタッフと共有したりする必要があり、いろいろな意味でプレッシャーになります。自分の子供なら「ちょっとした怪我くらい子供なら当たり前」で済むところが、仕事で他人の子供を預かるとなると、そうはいきません。
5)人間関係が大変
どんな業界でも、人間関係は大変だと思います。しかしその中でも看護師や保育士の人間関係の大変さは有名なようです。「女性ばかりの職場だから」という意見もあるようですが、以前勤務していた男性保育士さんが比較的多めの保育園も、職場の人間関係はずいぶん大変でした(若い保育士さんは恋愛関係が絡んで、よけい大変そうでした。。)
保育士は、ストレスがたまりやすい環境にあると思います。大勢の子供の安全を常に見守りながらそれぞれを適切に世話をするだけでも大変なのに、行政や会社からは低待遇、労働条件は過酷、保護者にも気を使わなくてはなりません。これらによるストレスが、無意識のうちに同僚に対して発散されているのではないでしょうか。ストレスが軽減されて精神的に余裕ができればスタッフ間の関係も自ずとよくなり、職場の雰囲気もよくなり、離職率も下がるのではないでしょうか。
私が知る限りでは、保育士さんの離職の原因の大半は人間関係のようです。給与水準が低いことはある程度承知済みで保育士になる人が多く、また子供の問題で悩むのにはまだ耐えられます。しかし無駄な人間関係に苛まれるというのは、やりがいもなく、馬鹿らしくなってしまいます。人事が頑張ってリクルートしても離職する人が多いので(病んで離職する人も結構多い)いつも保育士不足、その結果残っている保育士の負担は増え、ストレス度は益々あがる、という悪循環が見られます。
特別に大切な幼少期の多くの時間を保育施設で過ごす子供たちにとって、保育士はとても重要な存在です。その保育士がストレスまみれの状態では、日本の未来を創り出す子供たちにも悪影響が出て、更には日本の未来にも悪影響が出るのではないでしょうか。保育士の環境と待遇の改善が望まれます。
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